札幌市中央区にあるカフェ「Daima(スワヒリ語の永久に)。民家を改装した約20坪の「無国籍家庭料理」を出す店内には様々な装飾品がごたごたと並ぶ。
白熱球が加山雄三の「夕陽は赤く」のレコードカバーを照らす。客が「気持ちのいいねえちゃんたちだな。姉妹かい?」と聞くと、調理場でたくましい腕を振るう長嶺久美子(36)と、かいがいしく客の世話をする三重野直美(38)は、こう答える。
「私たち恋人同士なんです」
「かせがにゃならんのよ」久美子の口癖だ。久美子には子供が二人、直美に三人。小学六年の男の子から三歳の女の子まで「家族七人」がこの店から糧を得る。久美子直美は同性愛のカップルであることを隠さない。
神は許しますか
1999年11月。久美子は北海道中南部の冷え冷えとする教会� �「同性のパートナーがいます。神は許してくれるでしょうか」と訴えた。牧師は「人を傷つけること以外に悪はない」と答えた。
互いの子供が通う幼稚園で出会った久美子と直美は、その年の暮れに居を一つにして「家族」となった。
ダムがどのように動作するか?
久美子は中学一年で初恋を経験した。同級生の女の子のことを胸に描くとわくわくどきどき。相談した友人から「久美子はあなたの『ファン』だよって言っといた。フォローしたんだから」と言われた。「好き」を「ファン」に置き換えなければならない違和感。恋心を隠すようになった。
1989年、24歳の久美子は「恋愛と安心を錯覚して」ある男性と結婚した。子供も生まれたが、原因不明の頭痛や吐き気に悩まされた。
心の求めと現実のギャップに苦しむ体。直美との出会いがさらに痛みに拍車を掛けた。
32歳になった久美子から「好きな女性がいる」と打ち明けられた夫は離婚に同意した。直美はすでに離婚していた。久美子の元夫は、今でも子供� �ちをキャンプや釣りに連れ出す。
久美子は性的少数者などの権利を主張しカウンセリングに応じる団体「バリアフリー社会をめざす少数派と女性の会ピーナツハート」の代表。店では月一回、勉強会を開く。
同性愛者は異性愛者のことを隠語で「ノンケ」と呼ぶ。「ノンケしか認めない社会は大嫌い。マイノリティーがどれだけ寂しい思いをしているか想像して」。
黒縁眼鏡のレンズの奥でまばたきしない目が訴える。
何がフラット羊の出産で起こった
二人は当初、札幌市内の性的少数者の活動団体に入った。だが、一年前、生活者の視点で活動したくなりピーナツハートを結成。勉強会にはノンケも来る。「若いころに相談する相手がいれば苦しまなかった。勇気を持って後に続いて」と思っている。
尽きぬ不安と希望
久美子と直美は「家族」なのに法的裏づけがない。一方が死亡しても遺族年金は受けられず、会社勤めをしても扶養家族手当てはもらえない。「同性婚を認めて」が願いだ。
午前9時、久美子と直美は三歳の女の子を保育園に送り、仕入れをして店に出勤。夜10時まで働く。二人が留守の間、ふろ掃除や米とぎなどは小学生の四人が手伝う。
子供たちは「お母さん( 久美子)とママ(直美)は大好き同士なの」と話すが、二人には不安と希望がある。
「子供たちが社会に出て、同性愛者が何と呼ばれているか理解した時、同じように言ってもらえるかしら」
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出会いの場だった幼稚園では、仲むつまじい二人に距離を置いた母親たちもいた。「どれだけ愛し合っているか」を説明しても「でも、いい男が見つかったら別れるんでしょ」と言う人もいる。
だが、幼稚園で二人の共通の友人となった看護婦成瀬浩子(38)のように「いろんな家族があっていい。彼女たちの選択も一つの形」と理解を示す人々も増え始めている。
「子どもたちの友人が大人になった時『おれ同性愛って知ってるよ。小学校の同級生の親にそういう人がいた』と差別感なく言える社会になってほしい」。
自然体で問題提起
少数者のための市民団体「ピーナツハート」永田克自交� ��部長の話
二人は子どもたちを学校に通わせ、町内会活動もやる普通≠フ家庭として自然体で世間に溶け込んでいる。隠れた存在でいると、性的少数派はマイナスイメージが広がるが、オープンにすることによってマイナス面を払拭している。
世間に「隣に性的少数派がいるんですよ」と問題提起しているともいえる。
精神的な部分では7人は幸せだろうが、社会制度の中では家族と認知されておらず、不慮の事故があったとき大変。子どものためにも制度的なバックアップが必要だ。
略歴とデータ ながみね・くみこ
性的少数者など社会的弱者のための市民団体代表。1965年5月5日横浜生まれ。札幌市で育ち、専門学校を卒業して編集会社勤務語、フリーライターに。1989年に結婚、男の子と女の子を出産し、1998年離婚。1999年12月、パートナーの三重野直美と所帯を持ち、7人家族。カフェを切り盛る。差別撤廃や同性婚など性的少数者の権利拡大を主張。電話相談や機関紙を発行している。同性愛者にも相続面など一般の夫婦お同じ権利を与え、同性婚を認めているオランダやドイツ型の社会を目指す。
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